▼ ココロのめざすところへ(著:永井康徳)より引用
「楽なように」
病気そのものや老化を治すことはできなくても、痛みやしんどさは自宅でも十分に取り除くことができるということから、私たち医療者は、患者さんを楽にすることをしっかりと考えて行います。
「やりたいように」
つらいことが緩和されれば、次はやりたいことができるように支援します。やりたいことは一人ひとり違います。患者さんの想いや望みを聞き、その想いや望みをかなえるお手伝いをさせていただきます。
「後悔しないように」
一生懸命介護をしても、大切な人が亡くなった後には「あのとき、ああしていれば」と後悔の気持ちが出てくるものです。だからこそ大事な局面では、考えられるすべての選択肢を提示し、ご本人とご家族にとって何が最善なのかを考えます。
なぜ、在宅医療なのか
団塊の世代が75歳を迎える2025年ごろには、日本には「多死社会」がやってくるといわれ、多くの人が「死に場所」に困る状態も予想されています。
だんだんと病院に長く入院していることができなくなってきました。それでも「家に帰りたいのに帰れない」社会的入院を続けざるを得ない人、家に戻ったのはいいけれど介護力が足りない、何かあったときに対応できない、看取りへの道筋がない、など、さまざまな困難が待ち構えているのも事実です。
一方で、病院には救命や急性期治療という本来の役割を超えた負担がのしかかり、医師たちが疲弊しています。
質の高い在宅医療がもっと普及すると、状態の安定した患者さんは安心して自宅や施設へ戻ることができるようになるはずです。私たち在宅医が定期的に訪問して重症化を防ぎ、自宅や施設での自然な看取りを迎えるお手伝いができるからです。
病院中心だった医療が、地域のなかで病院・診療所や介護サービス等が協力しあって患者さんをみる「地域完結型医療」へと移行していくことが可能になるのです。
患者さんの生き方に向き合う医療
在宅で療養する患者さんの多くは障がいや治らない病気、老化による衰弱を伴っています。そこで必要とされるのは「治す医療」よりも、住み慣れた家で自分らしく生きていきたいと願う患者さんに「寄り添う医療」だと思います。私たちは、患者さん本人がどうしたいのか、その意思を確かめ、その生き方に向き合って、その方の人生と生活を支える医療を提供していきたいと考えています。
病院であれば医師や看護師がいつでもいますし、環境も整っており、食事や介護も提供されます。しかし、自宅ではさまざまな不安が沸き起こります。自宅で最期を迎えたいと願っても、「不安」という高いハードルを越えなければなりません。
私たちはそれぞれの患者さんに、どんなサービスが必要で、どのような療養ができるかを具体的に考え、望ましい療養生活を患者さんとご家族へ提案させていただきます。
24時間連絡がつき、訪問する体制が整っていること、病状に応じて診療や看護の頻度を考え、医療・介護の専門職が患者さんのために一つのチームとなり、サポートしていきます。患者さん自身が、「家に帰ったら、こんなふうに過ごせるんだな。心配しなくていいんだな」と想像できるように、「安心して家で過ごせますよ」と伝えます。
患者さんが家に帰りたいと希望されたら、痛みやしんどさといった身体のつらさ、不安やいら立ち、悲しみといった心の痛みを聞き出します。どうすればからだのつらさを取り除けるのか、心の痛みを減らすことができるのか、その方法を探し、提案できるように努めます。
患者さんは今感じているつらさやしんどさを解決できるとわかれば、「あれがしたい」「これがしたい」と思う気持ちの余裕も生まれます。家に帰ってどんなことがしたいのかを患者さんと一緒になって考え、どうやって叶えていくかを話し合いたいと思います。
医療者である私たちは、さまざまな不安を持った患者さんをサポートする裏方です。医療でできることには限界がありますが、その限界を知ったうえで、患者さんと向き合うことを大切にします。
[余命]×[満足度]=[患者さんの幸せ]
長生きすることだけが、幸せの尺度ではありません。残された時間をどう過ごしたいのか、その日々の充実度も幸福感に影響を与えます。私たちは、患者さんが本当に望んでいるのは何かと考え、それに応えるための支援をしていきたいと考えています。
「一度しかない人生、悔いがないように」
一人ひとりの患者さんとご家族の人生に向き合うことで、私たちは常に「人生とは何か」を学ばせていただいています。患者さんより教えていただいたことを、私たちは社会に還元していかなければならないと考えています。
人生は一度きりです。
患者さんお一人おひとりと悔いのない人生を全うできるよう最善を尽くすとともに、私たち医療者も、悔いが残らないよう精一杯、患者さんと向き合い、チャレンジし続けていきたいと思います。
在宅医療を志すにあたり、医療法人 ゆうの森 たんぽぽクリニック(愛媛県松山市)にて、在宅医療に必要な多くのことを学ばせていただきました。
ここで学んだ、在宅医療におけるエッセンスを引き継がせていただきます。どれもすべて、永井先生より教わったことばかりであります。

マーガレットの花言葉は、「誠実」「信頼」。
また、このクリニックが位置する天白区の花にも指定されています。
私たちは、この地への想いを込め、
常に誠実で、地域の皆さまに信頼されるクリニックでありたいと、この名を付けました。